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物音と気配
普段とは違う音が、森の中に漂う。見上げると、高い梢の隙間から、太陽の光が斜線状に差し込んでいる。時折、バキバキという音や、カランカランという音が聞こえ、それが移動しながら、こちらへ近づいて来るのがわかる。昨日降った雨露が辺りにある葉の上を濡らしていた。サササッと、森の奥へ走りこむ野ネズミの足音が過ぎていく。高い木の枝からは、数種の野鳥の声が響き渡る。その時だった。目の前の光が一瞬だが遮られる。ふと見ると、複数の移動している影。そう、人間の姿だった。森にはいろいろな障害物が存在する。低くは、ササやそれ以外の野草の群落。歩く者にとっては、不具合に感じられる地表の起伏。落ちた枝葉や、大きなものでは、倒木などがある。これらは、すべて障害物となるのだ。 |
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